そんなわけで発売日から一日遅れた11/21日の19時過ぎにペリカン便で
サイン入りソフトが届いたのを連休を使ってさっくりクリアしたその感想でも。


とりあえずタダで貰ったものだけにあんまり悪い事を書くのは気が引ける部分はあるのだけど、
それでも(情報初出の時期から見て)開発期間を一年半以上かけたフルプライスソフトとして
この出来はどうなんだろうと思わざるを得ない部分もあるので、全体的に辛めの評価で。


このジャンルで今時音声なしってのも珍しい話だけど、ドラマCDとか初回特典に付ける辺り、
なんかポリシーがあってそうしてるわけじゃなくて、純粋に予算なり開発期間なりの都合っぽいし、
全体的な容量も十数時間で全ルートコンプ出来るほどってのはどうにもチープな感じが漂う。
最近の作品っぽさがあるのは最低解像度が1280x720のワイド仕様とか位で、
それ以外は2000年代前半の作品といわれても信じられるレベルな気がする。


まぁ、こちとらシナリオ評価に極めて偏重してる人間ですのでPLAY時間が短かったり
声がなかったりしても、シナリオがしっかりさえしていれば満足できる自信はあるのだけど、
その肝心の(そしてこちらが一番期待していた)シナリオ部分がまた何とも評価しづらいもので。


序〜中盤の「もっけ」とか「幻仔譚じゃのめ」辺りの一話完結レベルの話を彷彿とさせる、
日常の狭間のすこしふしぎな妖怪譚みたいな話の積み重ねは、単体で取り出して見れば
嫌いじゃないというか結構好きな路線なのだけど、この手のギャルゲフォーマットの作品で
人間関係の変化とかメインストーリーの進展をほとんど起こさずに平坦な話を続けられるのは
流石にちょっと辛いものが。端的に言うと流石に地味すぎ退屈すぎで。


中盤以降は多少のバトル要素も入りつつの個別ルートだけれども、
ルート分岐の選択肢が凄い大雑把でPL的にそのルートへの思い入れを持ちづらい上に、
分岐後のストーリーも特に目新しかったりテーマ的な深みを感じられたりするわけでもなく。
結局大きな盛り上がりとかもないまま読み進めてる内に「あ、終わっちゃった」的な感覚で。


逆にこの作品ならではのオリジナリティが感じられて手放しで褒められると思った点は、
着物を着た2足歩行のワンコ犬神の犬彦や式神ねこのヒマワリ、家鳴りをはじめとする
器物妖怪とかの変則的人外萌え、この部分は妖怪モノだからこそでもあるしかなり良かった。
明らかにヒロイン勢よりこの辺の連中の方が印象に残ってるのは正直どうかとも思うけど。


ヒロイン勢に関しては、PLAY前に期待していた人間の黒い面を見せてくれることは
まったく叶わなかったわけで、その時点でまぁ期待外れと言わざるを得ず。
唯一妖狐キャラの芙蓉(結局人外だけど)は、これも他のゲームではなかなかみないオリジナリティのあるキャラ造形でかなり気に入った。
大人びて落ち着いたこの外見ながら、中身はまだまだ幼くストレートに好意や感情を顕しつつも
落ち着きはそのままで、幼稚だったり押し付けがましかったりはしないっていう
人外ロリとは逆方向のギャップ萌えとそれでいて外見の雰囲気もこわさないバランスはちょっと来るものがあった。
シナリオが短すぎてキャラ萌えを堪能する暇があまり無いのは悲しい所だけれども、
それでも芙蓉が居たおかげで最終的な印象に相当プラスされてるのは間違いなく。


そんなこんなでそれなりのレベルで気に入ったヒロインと脇キャラ(脇器物?)が居たおかげで
最終的にやって損したとか時間を返せと思う事はなかったわけだけど、
自分で定価でこれを買ってたとしたら後悔していたであろうことは否定できなく。
田舎舞台の妖怪伝奇ゲーとしては「ヒトカタノオウ」っていう個人的に地味ながらも完成度の高い良作として
凄い評価の高い対抗馬があるわけで、それと比較してもこのボリュームだと正直適正価格は3000円位じゃないかなーという印象。
まぁ直前PLAYがシュタインズ・ゲートだったり私的思い入れの強い作品と比較されるとか、
間が悪いといえば悪いんだけど、それでも残念な印象は拭えない。


なんというか西川真音氏の向いてるジャンルや方向性と今回の作風はミスマッチだったんじゃないかなって感じだし、
次回作とかあるとしたら狭い舞台で登場人物絞って心情掘り下げる系の話を期待したいんだけど、
今作の開発期間的にシナリオが一番遅れた原因っぽいし、次見られるのも大分先になりそうかなぁ。