いや、もう本当に良かった。昨日の段階でも私的評価はかなり高かったわけだけど、
あそこから更に向上。これほどのものが見られるとは思ってなくて予想以上の大満足。
とにかく、恵麻と里伽子シナリオ、特に里伽子シナリオの出来が相当に効いた。


恵麻シナリオは世間的にはあんま評判良くはなさそうだけど、
個人的には黒かったり、裏があったりするキャラが好きってのもあるし、
二重の意味での姉っていう特殊な設定もキチンと生かして、
この設定ならではのシナリオが描かれていたのが割りと高評価。
まぁ、里伽子との対比で前作でいうチロル相当の立ち位置に置かれちゃった関係で
ラストが里伽子に喰われちゃった感もあるんだけど、その分里伽子シナリオが引き立ってはいるし。


で、その里伽子シナリオは他を圧倒した完成度と破壊力を誇るわけで。
単純にシナリオの出来で言うなら、香奈子さんシナリオに匹敵する出来と思える。
向こうは前も言ったように、偶然生まれた種子が必然によって、鍛え、育てられた結果
実った奇跡的な物語だったと思ってるのだけど、こっちは伏線等すべて計算して
緻密に組み上げられて生み出された必然に基づく完成度の物語っていう感じで。
個人的にはキャラへの思い入れの差もあって香奈子さんシナリオの方が好きだけど、
里伽子シナリオも極めて評価が高いことには間違いなく。


ネタバレ回避で詳しくは言えないけど、シナリオの出来が突出してる事に加えて、その位置づけや
キャラの背負った物の関係で、ある種物語世界の土台自体を引っくり返しかねない諸刃のヤイバっぽい所もある。
それでもやっぱり、『パルフェ』という作品を締めくくるエンディングは里伽子Trueエンドしか考えられないわけで。
前作の香奈子SSラストに匹敵して、感動して余韻が心に残る私的に最高級のエンディング。
そういう意味でもラスト2人を恵麻→里伽子の順で終えたのは大正解だった。
最初の4人はわりとどの順番でも問題ないっぽいけど、この順番は強く推奨。

作品全体の評価に戻ると、タイトルからして「ショコラの完璧な二番煎じ」をうたうだけあって
前作を強く意識しているのは明らかで、キャラやシナリオにもあえて前作を踏襲した部分が見受けられる。
『ショコラ』とは全く別のオリジナルの作品を望む人にとっては単なる前作の焼き直しに過ぎないと
映る部分も多いかもしれないけど、前作の世界観や雰囲気が好きな人間にとっては、
前作の欠点をきちんと改善して、長所はきっちり伸ばされたこの作品は安心して楽しめる出来栄え。
大きな欠点はほとんどなく、個々の要素も全てレベルが高い、丁寧に作られていて間違いなく良作といえる。

私的評価で言えば、日常描写の楽しさは過去最高級で、キャラクターもそれぞれに魅力的で嫌いなキャラは皆無で、
いつまでも作品世界に浸っていたいと感じさせられて、終えてしまうのが勿体ない位で。
ラストシナリオは、重すぎてその世界観からの剥離してる部分も感じられたけど、それでも
強く感動して、大きな余韻が残って、本当に気分良く終えられたので、極めて高評価。
パルフェ』をやったせいで『ショコラ』に対する思い入れもますます上がった部分があるから、
パルフェ』が『ショコラ』を越えたとはいえないけど、どちらも好きなのは間違いなく。
今年のベストがこの作品であっても全く不思議はないと思える、そのくらいの思い入れ。


奇をてらったような部分はなくて、展開もあるていど先読み出来るものが多いけど、
個々のキャラクターの魅力がきっちりと引き出されたシナリオは、本当に読んでて楽しいものになっていて、
王道を王道として丁寧に描くがゆえのこの面白さはある意味非常に希少。
この丸戸史明ってライターさんは本当にこういう部分の巧さでは卓抜してると思う。


客観的に見ても良作なのは確かだと思うし、十二分に人に勧められる作品。
前作をやってなくても、基本的には問題なく楽しめるだろうけど、
前作をやっていた方がより楽しめるって部分も結構あるし、
出来れば前作からのPLAYがお勧め。パルフェが気に入ってショコラもって場合は
システム的な不親切さの度合いが桁違いだから挫折しやすいってのもあるけど。
まぁ、それを差し引いても前作も個人的に大好きな作品なわけですが。


あと、ショコラも含めたシリーズの個人的感想としては、「ファミーユ(キュリオ)」っていう
一つの『場』を中心とした、ある種の共同体としての登場人物たちの日常と掛け合いが本当に楽しくて、
また、この『場』を共有し、共に歩んでいこうとする所がすごく心地よい。
このあたりには、メーカーは全く違うけど、「とらいあんぐるハート」シリーズに対して
自分が抱いた感情とかなり近いものを感じる。
とらハから戦闘と人外要素のぞいて、日常描写の楽しさの純度を上げてみたみたいな。