舞-HiME 運命の系統樹 修羅

PS2版の頃から評判は聞いてたわけで、それなりに期待してPLAYしてみたわけだけど、正直期待以上の出来。
PS2版からは増えているとはいえシナリオ分量に比べてCG枚数は明らかに少ないし、演出も弱めで
前半の共通ルートがギャルゲー臭がやや強すぎ&展開が間延びしてて中弛みしがちとか
一部のHiMEの扱いが悪すぎ(立ち絵すらなし)とか碧ED、奈緒EDの手抜きっぷりとか欠点もそれなりにあったけど、
後半の個別ルートに入ってHiMEバトル開始以降は、加速していく展開と容赦のなさっぷりは流石。


メディアミックス展開の中でも設定その他、最も重い話な訳で、容赦なく人死にはあるし、死んだ人間は決して生き返らない、
誰もが救われる大団円なんてものは存在し得ないっていった世界観なんで、そう言うのが苦手な人は避けるのが無難。
あと、TV版とは色んな意味で完全に別物なのでTV版への思い入れの強い人にも向かないかも。
むしろTV・漫画版共に知らない人がGame版から始める方が楽しめそう。
個人的にはこの絶対的な正解のない限定状況の中で、それぞれに想いと覚悟を抱えて戦いに身を投じることになる
キャラクター達の心情がきっちりと描写されたシナリオにはまった。


特に良かったのはなつきシナリオ・深優シナリオそして、修羅で追加の静留編が本当に最高。(以下ネタバレ)
深優シナリオは、所謂アンドロイドは恋をするか系統の良くある話が下敷きになってはいるけど、
大切な者の存在ってのを使って上手く舞-HiMEって作品の中に落としてこんであるので、
ありきたりって感覚はなしに読めるのが良い。また、主人公が他のシナリオみたく盲目的に
「戦っちゃいけない」って言ってるだけじゃなくて、「守る為の闘い」ってのをきっちり掲げてて
戦いに対する主人公とヒロインのベクトルがちゃんと一致してて感情移入しやすい。
朔夜とかミコトシナリオはその辺がネックでラスト間際までストレスが溜まる造りだったし。
(舞衣シナリオはベクトルはぶれないけどそもそも戦いのウエイトが少なすぎるという別の問題が)
チャイルド召喚のムービーは全HiME中で最も格好良いんじゃないかと個人的には思う。
ラストバトルの偽アリッサとのやりとりとか台詞がもういちいち格好良いし、キャラ的には一番好きかも。


なつきシナリオも、協力して儀式の謎と黒幕を追いつつ進行していくストーリーは普通に引き込まれるし、
むつみさんの最期以降の展開はもう見所というか名シーンばっか。
ラストも一番ハッピー風味なエンドだけど、その裏にある喪失感は拭えずに、
それでも先を見据えるってENDは凄い余韻があって好き。


静留編はもうなつきシナリオの裏で起きていた事を静留視点で追っているだけだから、
新たに判明する事実とかは基本的にないし、なつきシナリオやった段階で
あらかた想像できる内容から基本的に外れないんだけど、
静留の心情描写の凄まじさだけでもう色んなものをぶっちぎり。
なんつーかもうせつな過ぎ、痛すぎ、悲しすぎ。
愛する者の為に、我が身を顧みず、たとえその想いが叶わないと知ってもなお
一切の後悔なく貫き通す静留の生き様はまさに『修羅』って形容が相応しい。
なつきシナリオも十分に良かったけど、想いの純度もあって静留編の方が私的に相当上ってーか
歴代でも私的TOPクラスだよ、これ。ホントひたすら痛い話だけど、それでも
この静留の想いの描写は心に響いた。総合では兎も角、個別シナリオだけで評価するなら
現時点で間違いなく今年TOPだ。