『ひまわり』

論文提出やら発表やらが終わってやっと余裕が出てきたので、
某統計サイトでちらほら感想が乗り出してた頃から気になってた『ひまわり』をようやくPLAY。


最初に調べた時には絵柄や「ロリっ娘宇宙人同棲ADV」ってジャンル表記に不安があったんだけど、
実際PLAYしてみると、確かに「ロリっ娘宇宙人同棲」は嘘ではないけど作品の本質は明らかに違う場所にあったわけで。
ほんわかした絵柄やジャンル表記からは予想も付かないレベルでガチに作り込まれたSFであり、
シナリオのレベルもとんでもなく高くて、まだメインストーリーと見られるシナリオをクリアした段階で、
全ENDはみてない状態だけど、それでも個人的な良作や名作を越えて「傑作」級に評価しうる作品。


SFというジャンル自体エロゲ(に限らずだろうけど)マイナーなある意味日陰者なジャンルなわけだけど、
背景やただのギミックとしてのSF設定ではなく、作品のテーマと不可分であり、なおかつ
その設定があってこそ可能な物語としてここまでキッチリとSFしてるエロゲーってのはちょっと思いつかないレベル。


また、シナリオ面では、細かい部分にまで張り巡らされた伏線に対して、謎の解明とまた新たな謎と伏線の提示と
いったバランスが絶妙に上手く、特に第2章以降はそれまでの一周目(体験版に相当)
をうまく下敷きとして、とにかく先が気になりグイグイと話に引き込んで行く。
その上で明かされるコアの部分の真相は圧巻の一言。個人的には「Ever17」以来の衝撃だった。


とりあえずクリアしたアクア編に関してだけど、
見た目に反して決して明るいだけのシナリオではなく、背景には重厚な設定を持ち、
登場人物の内面も賑やかな日常シーンの裏に、それぞれに重いある種の情念も抱えているのだけど、
それでもなお最後まで芯の部分の青臭くも真っ直ぐな青春路線を貫いたENDは読後感も非常に爽やか。

一部設定に疑問が有る部分があったり、立ち絵はともかく、CGの絶対数の少なさと若干の質のばらつきや
テキスト面では誤字脱字が少々目立つ等の粗があるのは確かだけど、
とにかく設定と伏線回収の巧みさ、登場人物の心情描写の上手さ、そしてそれらにより
形作られた物語の放つ輝きには本当に心うたれた。


コンプした段階でどう変わるかはまだ分からないけど、
現時点では今更だけど2007年に出た作品としては最高傑作だと信じられる。
これだけの作品が実売1500円以下で買えるのは分量的にも
極めてコストパフォーマンスが高いと言えるわけで、
体験版で全く合わないとかでなければ買って損無いと思うので是非に触れてみて欲しい作品。