『ひまわり』

残りのルートandバッドエンド回収してTIPSも全部埋めてコンプリート。
予想通り最終ルートはここまであまり掘り下げの無かったキャラの内面と背景設定の補完
(あとは次回作?へのネタふり)中心で物語としての力強さからして、
やはりアクアルートがメインと考えて良さそうな感じ。
最終評価は最後のネタ振りが個人的にちょっと蛇足に感じられたこともあり、
アクア編クリア時とほぼ同等かちょっと下がった位で。
それでも、作品への思い入れで判断だとカタハネとどっちが上かはまだ微妙だけど、
純粋に作品トータルの出来で判断して個人的な2007年ベストは「ひまわり」で確定。


とにかく同人だから出来るであろう、作者の「宇宙」への想いが溢れた作風に、
中盤以降、次から次へと回収され、また更に張り巡らされる伏線の数々と、
二転三転しながら明かされていく「真実」の重みといった構成の巧みさ、
何より見た目の幼さ・可愛らしさに反して、それぞれに重い背景と内面の葛藤を抱えながらも、
前に踏み出す意志を持った、記号的テンプレートに留まらない、魅力的なヒロインと
一つの「物語」としての完成度は、商業-同人の区別無しに、名作・傑作と評価されるべき出来。


以下、ネタバレありで個別要素とか個人的な感想
とりあえず、小学生の頃は星空みたり、星座の話とか調べるのが大好きで、
小六の将来の夢で「宇宙開発の研究者」とか言ってた天文少年で、
ペットボトルロケットとかペンシルロケット飛ばしてた者としては、
この作品全般に散りばめられてる、「宇宙への想い」ってのが、
心の琴線に触れまくりで、それだけで高評価。


シナリオ面でも目まぐるしい伏線の回収と、新たな謎や情報の提示が続く
展開に、特に2章の「AQUA」編以降、先が気になってひき込まれまくりで、
更にシャトル墜落事故の真相やルナウィルスの感染経路等の「真実」が明かされた時の
伏線回収の巧みさと、事実の大きさという二つの面で迫ってくる衝撃には圧倒されて、
前にも書いたけど、「Ever17」以来の衝撃(流石に衝撃のでかさではEverのがかなり上だけど)。


でも、そういう点よりも自分的に一番評価が高い――というより単純に好き――な点は
やっぱり、ヒロイン、特にアクアのキャラクター性の深さと、それにより紡がれた物語それ自体。
アクアはこの作品の真のヒロインと考えて間違いはないと思うんだけど(アリエスはメインの割に報われてないし)、
やっぱり2章の過去編、「AQUA」編の存在がとてつもなく大きい。
2章単体でも一つの物語として、十二分に高品質ではあると思うのだけど、
ここで一人称視点を用いてアクアの内面が十二分に掘り下げられて居るだけに、
3章のアクア編(あるいは1周目のアリエス編)での、アクアの言動の裏にどんな感情を抱えていたかが
読み取ることが出来るわけで、これが物語に深みを与えまくっている。


シンフォニック=レイン」と「僕と、僕らの夏」を最高傑作としてることからも分かるとおり、
自分にとってはこのヒロインの内面描写っていうのは最大限に重みを置いてる部分であって、
この作品はそこの部分で自分の期待にかなりの割合で応えてくれているのが何より大きい。
自分の現在の状況に希望を持っていなかったヒロインが、主人公との関わりを通して、
最終的に明日への希望を取り戻すっていう流れ自体もベタだけど一番共感できるパターン。


また、主人公とヒロインがどちらかがどちらかに過度に依存したり、
一方に偏りすぎた力関係はあまり好きじゃなくて、個人的に理想の関係性ってのは
「戦友」ないし「共犯者」で、単に一時的な感情に基づいて一緒になったわけではなく、
言葉にださなくても深い部分での「繋がり」があるって信じられるのが重要なんだけど、
この主人公の陽一とアクアの場合も、明確に同じ「罪」を持って共に前に進もうとする絆が感じられて、
作中のカップルとしても(大吾−アクアも結構好きだけど)この組み合わせが一番好き。
(ちなみにこの手の「戦友」ないし「共犯者」系で個人的最高評価は「鎖」の恭介ー恵)


そんな感じで、客観的な完成度でも高評価で、その上自分の郷愁や
深い部分での志向性(嗜好性)をダイレクトに付かれたわけで、
その上でアクアルートはエンディングもきっちりハッピーエンドで
読後感良く爽やかにまとめてくれてるわけで、
極めて評価が高くなるのも当然といえば当然。