キャラ別感想その3、メインラスト


・羽山海己
基本的に、さしたる理由もなしに主人公にべったりなタイプの幼馴染キャラは好きじゃないんだけど、
このキャラの場合、きちんとその原因と、それだけ親しいのにくっつかない理由とかちゃんとあったのと、
それだけあからさまな好意に気づかないってどんな朴念仁よみたいなこともなくて、その辺は良かった。
ごめんなさい連呼系の癖に、卑屈ではなくて、実際はやたら我が強くて考え曲げない辺りも新鮮だった。
ただ、その「理由」のせいで、他のキャラに比べて設定的に話が重くなり過ぎて若干浮いてる感もあったけど。
そういう意味では個別シナリオのラストを、あそこで切ってその先を描かなかったのは、
もの足りないって不満がでるのは仕方ないだろうけど、あれ以上重くなるのを避けたという意味では
間違いじゃなかったんじゃないかなとは思う。もっとも微妙に盛り上がりに欠けてたとは感じたけど。


個別シナリオで一番良かったと思うのは高見塚祭よりやっぱり「超カミングアウト」での各戸撃破(違)のシーンだし。
他のキャラの場合大体「最初からバレバレ」か「事件があって発覚」のどっちかで周囲の反応の描写が少なかったけど、
今回はちゃんと他のキャラとも向き合ってて、それぞれの気持ちの整理をしっかり描いてるのが良い。
凛奈の「既にしてしまったことに対して〜」とか凛奈シナリオの直後にやってただけに威力でかかったし。


ラストは「星の海、渡る」ってどんなくさいネーミングよと思いつつもウケタ。
つぐみ寮の扱いというかその後も唯一明示的に示されててこれはこれで
海己シナリオラストで締めも悪くなかったかなとこの時点では思ってた。


・「約束の日」
既にキャラ別感想でもなんでもないけど、まぁここまでキャラ感想といいつつ半分以上
個別シナリオ感想だったし、順番考えるとこの位置で書いとくべきかなということで。


ここまで6人のシナリオ終えた段階では、十分に日常は面白かったし、それなりに満足ではあったけど、
前2作にあったような爆発力の高いシナリオはなかったこともあって、期待通りではあったけど、
それ以上ではなかった良作くらいの感想だったんだけど、この「約束の日」に完全にやられたというか
一気に私的歴代ベストの上位に食い込むくらいまで持ってかれた。
ここまでの6人のシナリオが多少薄くなってしまうというリスクを冒しつつも、あえてここまで
描いてこなかった「卒寮」=別れのそのシーンを、全員のシナリオを終えたこのタイミングで出してくるっていう
この構成は賛否両論あるだろうけど、ここまでで寮のメンバーそれぞれに対する思い入れが深まった上で
見せられるからこそある破壊力ってのを味わった人間としては全力で賛というか肯定したい。


ってーかもうスタート時の「この青空に約束を―」のハモリに始まって、引越し荷物って小道具を使っての軽いジャブ、
最後の時間を迎えるにあたってのその時までのそれぞれの時間の過ごし方に、そこに込められた想い、
卒寮式でのさえちゃんの一人一人に贈る言葉に、絶妙のタイミングで掛かる「Two of us, Seven of Us」と
会長の本当の答辞、最後の締めに約束の歌たる「さよならのかわりに」斉唱って段取りがもういちいち
こっちの感情を揺さぶりまくりで、涙腺緩みっぱなし。あえて不満を挙げるとすれば、最後の最後に
皆の記念撮影の写真かなんか出して欲しかった。たとえベタベタなネタだとしても、この状況ならアリだと
思うんだけどなー。つーか、そもそも作品テーマを考えた場合まともに全員集合なCGが
ベランダの一枚くらいしかないってこと自体が間違ってるとも思うわけだけど。


まー、それはさておき、ラストまで引っ張った上で満を持して放つ一撃ってことで
完全にノックアウトされて、この「約束の日」は最高の余韻で終われたんだけど、
作品自体はこれで完結じゃなかったわけで。


・三田村茜
そんなわけで、昨今流行りの(?)やたら作中プッシュされてる割に攻略できないサブキャラ(FD要員とも)かと
思ってたところに実は攻略可能というかある意味真ヒロインということがまずは驚きで。
キャラ自体は共通ルートや他キャラシナリオでの活躍からしてスゲ―好きだったし、
この個別シナリオでの茜本人の行動とかも何気に凄まじく健気だったりで好きなんだけど、
如何せんこのシナリオの位置付け自体が問題ありすぎで手放しで喜べないというか正直マイナス過ぎる。
海己シナリオで寮の存続という未来を得て、んでもって「約束の日」で最高の余韻を迎えてたところに
いきなり神社の階段上った先のアレを見せられると本気で凹むというか余韻ぶちこわしで台無し。


航自身の救済とか、伏線回収やらあるいはプレーヤーを現実に回帰させる為っていう位置付けはわからないでもないけど、
正直もうちょい別の構成があったんじゃないかと思わずにはいられない。
個人的にはやっぱり「約束の日」っていう最高の締めで作品を終わりたかったなー。
まぁ、結局未だちょっとづつ再プレイはしてるし、暫く封印するってときの最後に「約束の日」で締めればとりあえずいいや。