『天使憑きの少女』感想

発売前は完全ノーチェックだったのだけど、某所での評価のされ方が
マイナーな良作好きとしては気になって、調べてみたらわりと好みっぽかったので購入。
GW中の唯一の休日だった日曜一日使ってコンプ。


いやー、期待以上というか予想のはるか斜め上を行く「凄い」作品だった。
面白かったかとか感動したかとかそういうの以前に、これ程掲げたテーマにきっちり向かい合った作品てのが最近は珍しいし、
何よりその掲げたテーマがあまりに異端というか凄まじくエロメディアでやるに相応しくないものだし。


今まで流行りものをあんま好まずに、どちらかというとニッチな趣向の作品を選んでPLAYしてきた(と思う)わけで、
その分エロゲらしからぬと思うような作品もそれなりにやってきたけど、
その中でもエロゲであることが間違ってると感じる度合いではこれに勝るものはないんじゃなかろうか。


復讐やその虚しさとか、死生観とかまでならまだそこまで珍しいってわけでもないだろうけど
脳死からの臓器移植の賛否(核心的ネタバレ)』なんてテーマを扱うエロゲが存在するとは流石に夢に

も思わなかったわなー。


でもこれだけ難しくて重いテーマに向き合って、物語的にはファンタジー要素の力を借りた形にはなってるけど、
きちんとこの作品なりの答えを用意して、更に一個の物語としてもきっちりと感動物としてまとめ上げてる事は素直に賞賛したい。


「四章から成る、少女の『願い』と『奇跡』の物語」ってうたい文句にそったオムニバスとして、1〜3章は多少の繋がりはあれど
バラバラの物語であったはずの各章が、最終章で明かされるピースを当てはめることにより、一本の繋がった物語となり、
ひとつの『奇跡』に収束するって構成も、インパクトこそ弱い部分はあるものの、非常に上手い。
そこまでに描かれてきた登場人物それぞれの「思い」が「収束して」、そして引き起こされる「奇跡」ってのは
基本的にシナリオ評価で登場人物の心情、思いに最も重きを置いてる自分にとってはかなり効く内容。


語るべきテーマを持って創られた作品で、かつテーマを語るだけでなく、きちんとテーマと密接した形で
物語としても高い完成度で纏まっていて、感動させられるってのはかなり凄い。
いや、ホント予想を大きく上回る深さと完成度のシナリオで、望外の掘り出し物だった。
商業的成功度外視してるとしか思えないような状態で、こういった作品がポンと出てくることが時々あるから、
18禁ゲーム業界ってのはあなどれない、というかだからこそなかなかエロゲはやめられねぇなーと。


しかし、パッケージやらOHPでの紹介やらデモやらだと黒背景に銃とかリストカットとか強調するような感じで
ダーク路線を目指しましたみたいな販促だけど、実際コンプすると作品イメージはこれ以上ない程澄んだ白だよなー、真逆だ。
この辺は流石に実際の作品の路線で販促かけるの無理だと思って売るために仕方なしにやってることなんかな。
まぁ、それにしたって殆ど売れずに話題にもなってなさげなのが悲しいところだけど。
流石にこれが流行されても困るけど、その異端っぷりとかシナリオの出来とかもうちょっと評価されるなり話題になるなり
されても良い作品だとは思うんだけどなー。このまま完全に埋もれられるのは正直惜しい。